コラム-三保松原の楽しみ方

知的好奇心を刺激する清水・三保の旅
バスに乗って注目6スポット を巡ってきました!


富士山世界文化遺産の構成資産である「三保松原」は、全国および世界に誇れる日本の名勝です。

しかし、三保の魅力はそれだけではありません。ほかにも訪れてみてほしい場所がたくさんあるのです。

そこで今回は、清水港町周辺から三保半島へかけて知的好奇心を刺激する6つのスポットをご紹介。静岡市在住ライターが、バスと徒歩で清水・三保を巡ってきました。

※令和2年2~3月の取材に基づいています。最新の情報は各施設等にお問い合わせください。

【JR清水駅】駅からバスに乗ってスタートです!


今回はバスと徒歩だけで、清水港町周辺と三保をのんびり巡ってみようと思います。

出発地となるのはJR清水駅のバスターミナルです。3番線のりばから乗車して「波止場フェルケール博物館」バス停で下車し、フェルケール博物館をめざします。

【フェルケール博物館】オシャレな蘭字や缶詰ラベルに惚れ惚れ!船と港の博物館

清水港は太平洋海運の拠点として、工業、商業を発展させてきましたが、明治32年に開港場となると、国際貿易港として海外交流の拠点となりました。フェルケール博物館は、そんな清水港の生い立ちや、清水の産業を盛り立ててきた人々の技術や情熱を知ることができる「船と港の博物館」です。

ちなみにフェルケールとはドイツ語で交通を意味する言葉。清水港らしい風情を感じます。

まず訪れたのは、1階の常設展示室です。

明治39年になると、清水港は日本茶の「直輸出」を成功させます。大正期には日本一の日本茶輸出港となり、静岡県の茶産業を大いに盛り上げました。

1階の常設展示室には、その輸出の際に用いられていた茶箱と、茶箱に貼られていた蘭字(らんじ)が展示されています。

特に目を引いたのが、こちらの色とりどりの蘭字です。デザインのセンスと文字のレタリング技術が際立っていて、およそ100年前の人々の感性の豊かさに惚れ惚れします。

蘭字は戦後になってくると、木版刷りからオフセット印刷が用いられるようになりますが、その印刷技術から発展したのが缶詰ラベル。そうです、日本で初めてまぐろ油漬缶詰の輸出を行い、今も清水の代表的な産業の1つである缶詰産業にもつながってくるのです。

そんな缶詰産業の歴史を知ることができるのが、別棟になっている「缶詰記念館」です。なんてコアな記念館なのでしょう。


缶詰記念館の建物は、日本初のまぐろ油漬缶詰を輸出した清水食品株式会社の創立当時の本社社屋を移転・補修したものだそう。建築物としても見応えたっぷりです。


缶詰製造初期は、まぐろの小骨を取る作業から缶詰に詰める作業まで、すべて手仕事で行っていたのだとか。刃物道具の種類の多さに驚きます。

こちらが缶詰ラベルです。フェルケール博物館ではなんと、4000点近くの缶詰ラベルを所蔵しているといいます。

展示されているのはその一部となりますが、見どころは満載!大胆で精巧なイラストとポップな色合いは、ずっと眺めていても飽きません。この缶詰記念館を目当てに来館される方も多いといいます。

清水のコアな歴史をじっくりと堪能できる、素敵な博物館でした。


フェルケール博物館(一般財団法人 清水港湾博博物館)
住所 静岡市清水区港町2-8-11
TEL 054-352-8060

【開館時間】9:30〜16:30
【休館日】月曜(但し祝祭日・振替休日の場合は開館)
【入館料】大人400円・中高生300円・小学生200円
(20名以上の団体20%引き)
※土曜日と「こどもの日」「海の日」は小・中学生無料
【駐車場】無料駐車場あり
https://www.suzuyo.co.jp/suzuyo/verkehr/


【ドリプラでランチ】料理人歴30年以上の店主が作る“ぷりぷりチャーハン”

フェルケール博物館を楽しんだあとは、歩いて約5分で行けるエスパルスドリームプラザ(通称ドリプラ)で、早めのランチを取ることにしました。

選んだお店は2018年9月オープンの清水チャーハン食堂。一番人気は定番チャーハン(680円)です。一口頬張ると、まず米粒のぷりっとした食感が、次いでお米の甘みと食材の旨みがまわった油が口の中に広がって、とってもおいしい!お米がみずみずしいので、パラパラチャーハンというよりは、ぷりぷりチャーハンといった感じです。

石焼シリーズも人気ということで、一度に3つの味が楽しめるエビチリカニ玉石焼チャーハン(980円)もご紹介します。

厚さ1cmはあるふわっとしたカニ玉のやさしい味わいと、エビチリのピリ辛がよく合います。熱々の器でできるおこげもポイント!

オーナーシェフは、料理人歴30年以上という佐々木さんです。おいしさの秘訣は「お米、塩加減、炒め方」だとおっしゃいます。佐々木さんが作るチャーハンを求めて、市街から通うファンがいるほど。

カウンター越しに見える調理姿や中華鍋を振るうときの小気味良い音も、おいしさの要素なのだと思いました。

店内にはカウンターのほか、テーブル席16席が用意されています。テイクアウトもできるため、ドリプラ横に広がる海辺の公園「清水マリンパーク」で食べるのもいいですね。

お腹が満たされたら、いよいよ三保へ出発です。ドリプラ近くのバス停からバスに乗って、いざ「神の道」をめざします。


食堂物語 清水チャーハン食堂
住所 静岡市清水区入船町13-15(エスパルスドリームプラザ 1F 清水いりふね通り)
TEL 054-351-1288

【営業時間】11:00〜21:00(L.O.20:30)
【定休日】火曜日
【駐車場】エスパルスドリームプラザ駐車場
https://www.shimizuchahan.com/


【神の道】三保海岸に降り立った神様が通る、約500mの松並木


「三保松原入口」バス停で下車し、三保街道「御穂神社入口」交差点を左折して10分ほど歩くと、「御穂(みほ)神社」が現れます。その向いにある、一直線に伸びた松並木が「神の道」です。

両サイドには樹齢200年以上の松がたくさん茂り、どこか厳かな雰囲気がたたずみます。それもそのはず、神の道は文字通り“神様が通る道”。約500mにわたる松並木は「羽衣の松」に通じていて、海の彼方から訪れる神様が羽衣の松を目印に降り立ち、この道を通って御穂神社に向かうといわれています。
そんな神の道を歩いていると、松に守られているような感覚を味わえます。上を見上げると、松の葉の緑と空の青のコントラストが美しく、清々しい気持ちになりました。


神の道
住所 静岡市清水区三保

◎バス停から神の道までの情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【みほしるべ】2019年にオープンした三保松原の魅力発信拠点!


神の道を歩き切ると見えてくるのが、静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」です。富士山と三保松原の魅力を、文化・信仰・芸術・地形・環境保全などの多様な視点から発信することを目的に、2019年3月にオープンしました。

みほしるべには2つの展示室がありますが、今回は三保松原の文化や芸術について知ることができる「1階展示室」を、ゆっくりと楽しんでみようと思います。

1階展示室は、導入路から神秘的な世界が広がります。赤、青、緑、白に変化する照明、風に揺れる天女の羽衣をイメージした装飾、松アロマの心地よい香りに、がぜんワクワクしてきます。

中に入ると、4Kカメラで撮影した富士山&三保松原の映像を楽しめる映像シアターと、6つの展示エリアが広がっていました。

展示エリアを見学する際には、劇場型音声ガイド「Otono」を利用するのもおすすめです。羽衣伝説の登場人物である天女と漁師の男が自分に話しかけるように案内してくれます。

利用する際は、展示室内のQRコードを読み込むか、みほしるべHPにあるOtonoのリンクにアクセスしてみてください。

展示エリアでは、三保松原のなりたち、富士山信仰と三保松原の深い関係、羽衣伝説、芸術の源泉としての富士山と三保松原、三保松原のさらなる広がりと未来について知ることができます。

中でも興味深かったのは、三保松原と富士山のスピリチュアルな関係。三保松原は、神が宿る山として畏れ敬われていた富士山への入り口として認識されていたのです。

富士山信仰と三保松原の展示エリアには、室町時代に描かれた「絹本著色富士曼荼羅図」の実物大レプリカが展示されていて、富士山と三保松原の目に見えないつながりを感じられます。


天女が舞を舞いながら天に戻っていく羽衣伝説ですが、そこに至るまでのストーリーを具体的に知っている方はどのくらいいるでしょうか。知らない方は、ぜひ羽衣伝説の展示エリアをチェックしてみてください。三保松原ならではの美しい物語の全貌を知ることができます。


展示を見終わったあとは、1階にある通り土間に設置されたベンチに座ってひと休憩。冬季の土日祝であれば、この先にある足湯(無料)に浸かりながら松原の景色を楽しむこともできます。

【羽衣の松】優雅に枝を伸ばす松の木は三保松原のシンボル

みほしるべで三保松原の芸術、文化を学んだあとは、歩いて数分のところにある「羽衣の松」へ。樹齢200年〜300年といわれる松の見事な枝ぶりに驚きました。

海岸に出ると、松原と富士山の雄大な景色が広がります。青々とした松と透き通った空、そして雪を被った富士山が美しいですね。

続いて向かうのは、東海大学海洋科学博物館です。下車したバス停からバスに乗り、終点の「東海大学三保水族館」をめざします。


みほしるべ(静岡市三保松原文化創造センター)
住所 静岡市清水区三保1338-45
TEL 054-340-2100

【開館時間】9:00〜16:30
【休館日】年中無休
【入館料】無料
【駐車場】無料駐車場多数あり
https://miho-no-matsubara.jp/

◎展示内容を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。(利用の際にはイヤホンが必要です)
https://www.otono.site/mihoshirube/


【東海大学海洋科学博物館】訪れるたびに新しい発見がある「海の博物館」

東海大学海洋科学博物館は、水族館としてだけではなく、駿河湾を中心とした生き物の調査・研究を行っていることが大きな特徴です。

こちらのパノラマ水槽には約50種類1000個体の魚が住んでいて、全面ガラス張りの水槽としては日本最大級の大きさなのだそう。


しばらくうっとり見つめていると、大きなホシエイがガラスに急接近。目のように見えるのは鼻ですが、微笑んでいるように見え、ほっこりとした気分になりました。

こちらは、清水区由比の定置網で採集されたというリュウグウノツカイの標本です。全長はなんと約5m!発見した漁師さんはさぞかし驚いたことでしょう。

全国的にも珍しいオス・メスの2匹で展示されています。

「駿河湾の生き物」エリアでは、駿河湾に生息する色とりどりの魚を見ることができます。

進行するごとに、展示される生き物たちの生息水深も深くなっていくのが特徴です。前に進むにつれて、深海の謎めいた生き物たちがひっそりと暮らす様子を楽しめます。

1階の最終エリアにある「くまのみ水族館」では、世界中のクマノミ約20種類が大集合。こちらの水槽はドーナツ型のリング水槽になっていて、中に入るとクマノミの泳ぐ姿をパノラマで見渡せます。

また、くまのみ水族館の裏側には、クマノミの飼育研究室があります。この日は、まだ全長数ミリ程度にしかならないカクレクマノミの赤ちゃんを見ることができました。

そのほか、クマノミのエサやり体験ができるコーナーや、ナマコやヒトデなど浜辺の生き物に触ることのできる「タッチプール」もあります。

せっかくなので両方体験してみることに。パクパクとエサを食べるクマノミはとってもかわいく、クマノミ柄のハンドタオルがもらえるのもうれしいです。

生まれて初めて触れたヒトデの感触は、どことなく人の手のようで……まさにヒトデ!あなたはどんな風に感じるでしょうか。ぜひ、体験してみてください。

次は、2階に上がって科学博物館部門へ。

こちらでは、全長18.6メートルもある巨大なピグミーシロナガスクジラの全身骨格標本や、メガマウスザメの剥製標本などを間近で見ることができます。

「機械水族館メクアリウム」では、海の動物たちの動きを機械で再現した「メカニマル(メカ+アニマル)」が展示されています。

写真は「みつゆびはちもんじ」という、胸びれをあしのようにして歩く魚のメカニマル。誰でも自由に操縦することができます。


東海大学海洋科学博物館
住所 静岡県静岡市清水区三保2389
TEL 054-334-2385

【開館時間】9:00〜17:00(最終入館時間16:30)
【休館日】火曜日(祝日は営業)
【入館料】大人1,500円(1,800円)小人750円(900円)シニア 750円(900円)※かっこ内の金額は海洋科学博物館と自然史博物館の共通券価格
【駐車場】1日500円
http://www.umi.muse-tokai.jp/


【東海大学自然史博物館】巨大な恐竜全身骨格は圧巻!「恐竜の博物館」

最後のスポットは、東海大学海洋科学博物館に隣接する恐竜の博物館です。

エスカレーターに乗って3階に上がると、そこは2億5100万年前の恐竜時代!全長26mのディプロドクスをはじめ、トリケラトプスやステゴサウルなどの代表的な恐竜の全身骨格が展示されています。

さらに面白いのが、ディプロドクスの全身骨格を下から見上げられるところです。脚のあいだからタルボサウルスの顔が見え、妙な臨場感がありました。

そのほか、約4億年前のデボン紀に発展した脊椎動物の化石の展示や、実際に触ることができる恐竜の化石も!

大昔にタイムスリップしたかのような、異次元の空間が広がっていました。


東海大学自然史博物館
住所 静岡県静岡市清水区三保2389
TEL 054-334-2385

【開館時間】9:00〜17:00(最終入館時間16:30)
【休館日】火曜日(祝日は営業)
【入館料】大人1,000円(1,800円)小人500円(900円)シニア 500円(900円)※かっこ内の金額は海洋科学博物館と自然史博物館の共通券価格
【駐車場】1日500円
http://www.sizen.muse-tokai.jp/


【JR清水駅】ゆったりバスに乗りながら今日1日を振り返る

バスの車窓からの景色を眺めながら、今日1日を振り返ります。

清水港の歴史を知り、神の参道を歩き、三保松原の文化を学び、駿河湾の神秘や遥か昔の地球の姿に触れて――。

有意義な1日に幸福感を感じるとともに、清水と三保に愛着や親しみを持っている自分に気づき、うれしくなりました。好きな場所が増えると、暮らしは彩りを増していきます。

もし、自由に過ごせる1日ができたら、ぜひ巡ってみてください。新しい好きな場所がきっと見つかると思います。

一覧へ戻る