コラム-三保松原の楽しみ方

レンタサイクルと水上バスで行く!
三保の景色・歴史探訪の旅

万葉集でも謳われた日本の名勝「三保松原」。これまでどんな歴史を歩み、これからどんな歴史をつくっていくのでしょうか。

三保の昔と今を知るために、静岡市在住ライターがレンタサイクルで三保半島を巡ってきました。

三保のシンボルとなる名所から日常の風景に溶け込む名所跡、そして富士山を望む絶景をお届けします!

※令和2年2~3月の取材に基づいています。最新の情報は各施設等にお問い合わせください。
令和2年7月より水上バスの運行ルートに変更があります。

【河岸の市】レンタサイクルの受付と水上バス切符の購入からスタートです!

今回はレンタサイクル&水上バスを利用して、景色を満喫しながら三保の歴史をゆっくり探訪してみようと思います。

出発地としたのは、観光レンタサイクルの受付と水上バス・江尻のりばがある「河岸の市」です。河岸の市はJR清水駅東口から徒歩4分という好立地。電車利用の方にもうれしいアクセスです。

まずは、河岸の市の事務所でレンタサイクルの受付をします。次いで、自転車置き場に設置された水上バス切符販売機で切符を購入。三保行き(三保羽衣ライン)の切符を、行きと帰りの2枚購入すれば準備OKです!

《レンタサイクルについて》
※土日祝は受付開始早々に全車貸し出し中になってしまうこともあるそうなので、早めに受付をするとよいでしょう。
※静岡市の観光レンタサイクル貸出場所は、自転車生活情報サイトで確認できます。


清水魚市場 河岸の市 レンタサイクル
住所 静岡市清水区島崎町149
TEL 054-355-3575

【受付場所】いちば館にある事務所
【営業時間】9:30〜17:30 (17:30までに返却)
【定休日】水曜日
【レンタル料】1日500円
http://kashinoichi.com/



富士山清水港クルーズ株式会社 水上バス
住所 静岡市清水区日の出町10-80(事務所)
TEL 054-353-2222

【乗船料】片道/大人400円、小人200円
※時刻表はHPをご覧ください
https://www.shimizu-cruise.co.jp/fare/
◎水上バスや周辺地域の情報を音声案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
(水上バスチラシのQRコードから入れます)


【水上バス・江尻のりば〜三保桟橋】水上バスに自転車を乗せて、いざ三保へ!

水上バス・江尻のりばは河岸の市のすぐ裏手。定刻になったら自転車と一緒に乗船し、三保桟橋(水上バス・三保のりば)をめざします。

空と海の青さ、水上バスのエンジンの振動、肌をなでる風のすべてが旅のはじまりのワクワク感を高めてくれます。およそ25分のクルーズを、存分に楽しみたいと思います。


出航してしばらくすると、上空にユリカモメの群れを発見!まるで水上バスを追うように飛来します。

11月〜3月頃のクルーズでは、越冬のユリカモメを見られるのが風物詩になっているようです。白くて美しいユリカモメをこんなに間近で見られるなんて感激!

もう1つ、水上バス・クルーズで楽しみにしていたのが海から望む富士山です。三保近くになると、三保松原の先端(真崎)と富士山を海越しに眺めることができます。

三保松原と富士山の写真といえば、富士山を遠景に三保松原が左手にある構図が定番ですが、水上バスからは右手に三保松原を望む構図で楽しめます。こんなところも、水上バス・クルーズの魅力です。

景色を眺めていたら、あっという間に三保桟橋に到着です。

自転車とともに下船したら、まずは三保飛行場近くにある「清水三保海浜公園」を目指してサイクリングをスタート。

せっかくなので、世界遺産エリアとされている半島の先端のほうまで足を伸ばし、駿河湾沿いを南下しながら自転車を走らせようと思います。

【清水三保海浜公園】富士山の景観を思い切り楽しめます!

三保桟橋から1.5kmほど走り、芝生のある広い公園「清水三保海浜公園」に到着。

世界遺産エリアだけあって、どこからでも雄大な富士山を望める絶景スポット!自転車を降り、カメラ片手に公園を散策してみます。

このほか、松林ゾーンにある散策路に入れば、マツ越しの富士山を眺めることも。お気に入りのフォトスポットを探してみてください♪

トイレ休憩をしたら、すぐそこの清水灯台に向かいます。


清水三保海浜公園
住所 静岡市清水区三保2110-9先

◎清水三保海浜公園の情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【清水灯台】100年以上前に造られた、日本初の鉄筋コンクリート造灯台

清水灯台は明治45年に造られた、日本初の鉄筋コンクリート造灯台です。明治期、国際貿易港として急速に成長した清水の発展を支えてきました。

現在は、経済産業省の「近代産業遺産」、土木学会の「推奨土木遺産」にも認定されています。

松原の緑に真っ白いフォルムがよく映えます。風見鶏(かざみどり)が天女の形をしているのもポイント。


清水灯台
住所 静岡県清水区三保2109-2

◎清水灯台の情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【伯良神社】羽衣伝説に登場する漁師の屋敷跡

次に訪れたのは「伯良(はくりょう)神社」です。清水灯台から西に向かって800mほど進んだ先の住宅街に、ひっそりとたたずんでいます。

伯良神社は羽衣伝説の漁師、伯良の屋敷跡に建てられた神社といわれています。毎年秋に開催される羽衣まつりでは、伯良神社で採火した薪能の種火を羽車神社まで運ぶ「伯良行列」というものが行われています。


伯良神社
住所 静岡県静岡市清水区三保3044


【太平洋岸自転車道〜鎌ヶ崎】最高のロケーションでサイクリングを再開!

伯良神社から清水灯台に戻ってサイクリング再開です。海岸線に沿って続く太平洋岸自転車道に入り、鎌ヶ崎をめざします。

サイクリングロードなのでとっても走りやすく、どこまでも走っていけそうな感覚に。右手に松、左手に駿河湾というロケーションも抜群!

鎌ヶ崎に着いたら自転車を降りて浜辺に足を伸ばします。名勝・鎌ヶ崎から望む富士山はやっぱり美しい。全国各地から人が訪れるのがわかります。

続いて向かうのは「羽衣の松」です。太平洋岸自動車道が遊歩道に切り替わるため、自転車をひきながら徒歩で現地をめざします。

道中で、こんなかわいい猫に会いました。


◎鎌ヶ崎の情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【羽衣の松】天女が羽衣をかけたとされる松に思いを馳せて


空から舞い降りた天女が松の枝に羽衣をかけ、それを漁師の男が見つけたことで物語がはじまる羽衣伝説。「羽衣の松」は、その天女が羽衣をかけたとされる松です。

また羽衣の松は、御穂(みほ)神社のご神体としても有名です。祭神の三穂津彦命と三穂津姫命が羽車に乗って新婚旅行に訪れた際、この松を目印にして降臨し、「羽車神社」に羽車を止め、「神の道」を経て「御穂神社」に導かれたといわれています。

そして、こちらが羽車神社です。なぜここに神社があるのか不思議に思っていましたが、そういう所以があったのですね。小さな神社ですが、御穂神社の離宮として立派に鎮座しています。

このあと御穂神社に向かいますが、その前に腹ごしらえです。御穂神社方面でランチをいただきます。


羽衣の松
住所 静岡市清水区三保

【駐車場】無料駐車場あり

◎羽衣の松の情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【御穂鶴でランチ】元造り酒屋のお食事処。地魚が美味!

ランチで訪れたのは、御穂神社からほど近い場所にある「御穂鶴(みほつる)」です。清水の地酒・地魚をメインとした居酒屋&食事処として地元の人々に愛されています。

お店を開業したのは今から25年ほど前ですが、実は昭和18年まで造り酒屋を営んでおり、現在の屋号でもある「御穂鶴」という地酒を造っていたといいます。

酒蔵を改装して仕上げた店内は、赴き感じる素敵な空間。梁は当時のものを使っているのだそう。

注文したのは、一番人気の「お刺身と天ぷらのミックス定食(1,650円)」です。ツヤツヤと輝くお刺身は厚めにカットされていて、食べ応えも十分!魚介と野菜の天ぷらもボリューム満点で、大満足のランチでした。

ランチメニューはほかに、お刺身定食(1,400円)、天ぷら定食(1,200円)、まぐろづけ丼(1,100円)、まぐろユッケ丼(1,100円)があり、魚好きにはうれしいライナップ。ただし、ランチは限定10食となるため、確実に行きたいときは予約がおすすめです。


御穂鶴
住所 静岡市清水区三保1026
TEL 054-334-0709(予約可)

【営業時間】11:30〜14:00(L.O.13:00)、17:30〜23:00(L.O.フード22:00/ドリンク22:30)
【定休日】水曜日
【駐車場】駐車場あり
http://mihotsuru.sakura.ne.jp/


【御穂神社】羽衣の切れ端が伝わる、羽衣伝説ゆかりの神社

羽衣の松、羽車神社、神の道を経て、三穂津彦命と三穂津姫命が迎えられたとされるのが御穂神社です。

以降も、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際に立ち寄ったとも伝えられ、平安時代の書物「延喜式」にも記録があるといいます。今川氏、徳川氏などの武将からも崇敬されていました。

また、天女が飛び立つ際に漁師の手に残ったという羽衣の切れ端が伝わる、羽衣伝説ゆかりの神社でもあります。


御穂神社
住所 静岡市清水区三保1073
TEL 054-334-0828

【駐車場】無料駐車場あり


【神の道】御穂神社と羽車神社を結ぶ、神様の道

こちらが御穂神社と羽車神社を結ぶ「神の道」です。その長さ約500m、樹齢200年以上の松の木が立ち並ぶ様子は圧巻です。

凛とそびえる古松は厳かな雰囲気を漂わせていて、非日常的な気分にさせてくれます。


神の道
住所 静岡市清水区三保

◎バス停から神の道までの情報を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。
http://otono.site/miho-no-matsubara/


【みほしるべ】2019年にオープンした三保松原の魅力発信拠点!

神の道を歩き切ると見えてくるのが、静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」です。富士山と三保松原の魅力を、文化・信仰・芸術・地形・松原保全などの多様な視点から発信することを目的に、2019年3月にオープンしました。

みほしるべには2つの展示室がありますが、今回は三保の歴史年表がある2階の「保全・郷土史の展示室」を見学することにしました。

世界のまつぼっくりを集めた展示コーナーです。一口にまつぼっくりといっても、大きさ・形がさまざまあることがわかります。種の飛ばし方にも特徴があり、近くで火事があると松かさを開いて種を飛ばす種類もあるのだとか。植物の不思議を感じます。

こちらは、三保のマツの木の根っこです。樹木の種類によって根の伸び方も異なりますが、マツの場合は下に向かって太く伸びるのが特徴です。養分が少ない荒地でも育つことができる、マツの力強さを感じます。

神の道にはかつて「龍の松」と呼ばれる、昇り竜のようにうねった形をした松の木がありました。2015年に亀裂が入り伐採されてしまいましたが、みほしるべではその断面を見ることができます。

年輪を数えたら樹齢257年であったことから、神の道や羽衣の松周辺に生える龍の松と同じくらいの老松の樹齢は、250〜300年であると考えられています。

そのほか、羽衣の松の葉の断面を顕微鏡で見られるコーナーや、神の道の安全のために伐採したマツで作った楽器を奏でられるコーナーも。

実は館内に流れる音楽は、三保松原で集めたさまざまな音を取り入れて作られたオリジナルの楽曲。音の世界からも三保を感じることができるのです。

こちらのコーナーでは、縄文時代から現在までの三保の歴史年表が展示されています。三保ではかつて海苔や真珠の養殖が盛んだったことや、明治20年から昭和16年頃まで多くの人々がアメリカに渡航したため、「アメリカ村」といわれた時代があったことなど、興味深い歴史のトピックが紹介されています。

昔の絵葉書も展示してあります。

昔の絵葉書や、1984年まで運行していた旧国鉄清水港線の終点・三保駅の切符など、三保の歴史を感じる資料が展示してあります。今日の最後に立ち寄る旧三保駅跡地の「三保ふれあい広場」では、実際に走っていた小型ディーゼル機関車とアルミナタンク車を見ることができます。

展示室からはテラスに出られるようになっていて、より松原を間近に感じることができます。1Fのミュージアムショップでコーヒーを買って寛ぐのもおすすめです。

3階の屋上にも自由に上がることができ、晴れていれば街並みを眼下に富士山を望めることができます。

みほしるべのあとは、少し自転車を走らせて、古から交通の要所として栄えた「塚間」に行ってみようと思います。


みほしるべ(静岡市三保松原文化創造センター)
住所 静岡市清水区三保1338-45
TEL 054-340-2100

【開館時間】9:00〜16:30
【休館日】年中無休
【入館料】無料
【駐車場】無料駐車場あり
https://miho-no-matsubara.jp/

◎展示内容を音声で案内してくれる劇場型音声ガイド「Otono」を利用できます。(利用の際にはイヤホンが必要です)
https://www.otono.site/mihoshirube/


【塚間】興津と三保を結んだ渡船場。鳥居は御穂神社の「一の鳥居」

塚間は鎌倉時代からある渡船場です。当時の航路は興津〜塚間となり、御穂神社や三保松原に訪れる人々の玄関口として、たいへん賑わったといいます。その名残がこの石鳥居。御穂神社の「一の鳥居」と呼ばれています。

現在は、水上バスのりば「塚間」として、「江尻」および「日の出」とつながっていて、主にこの地域に通勤する人の交通手段として活用されているといいます。


塚間
住所 静岡市清水区三保705-10


【三保ふれあい広場】旧三保駅跡地。機関車とアルミナタンク車がお出迎え

今日最後の歴史探訪の場所は、旧三保駅跡地の「三保ふれあい広場」。現在は公園として地域の人々の癒しスポットになっていますが、1984年まで旧国鉄清水港線の終点・三保駅でした。

公園の奥には実際に走っていた小型ディーゼル機関車とアルミナタンク車が佇みます。みほしるべで当時の切符などの資料が展示されていましたね!

熱心な鉄道ファンでなくても、フォルムのカッコよさにテンションアップ!はたらく車の力強さは健在です。

公園でひと休みしたら、水上バス・三保桟橋をめざします。


三保ふれあい広場(旧三保駅)
住所 静岡市清水区三保3562


【水上バス・三保桟橋〜江尻のりば】旅の終わりは水上バスで

夕方の三保街道を走って、水上バス・三保桟橋に到着しました。景色を見ながらのんびりと帰ることができるのは水上バスならでは。移動手段としての利便性を改めて感じました。

※平日・土日祝とも、三保桟橋からの最終便は16時40分。河岸の一へのレンタサイクル返却時間も17時30分までとなるので、乗り遅れないように注意しましょう♪

乗船してしばらくすると、行きにも見たユリカモメの群れが!もう少しで触れそうなくらい低めの高度で、水上バスと並行して飛行します。

そして後ろを見ると、どんどん小さくなっていく三保半島がありました。今日1日かけて巡ったさまざまな場所を思い出すと、別れがたい気分になってくるから不思議です。

また自転車で、走りに訪れたいと思います!

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