日本画Japanese Paintings
-
日本画三保富士
悠久の時を思わせる静謐な情景が広がる。初夏であろうか。白い砂浜に続く松林、凪いだ海に涼しげな船が浮かぶ。遠景に雪を頂く富士を配し、三保の松原を俯瞰する壮大な景観である。金地に描かれた山なみと松原のたらし込み、富士と同系の色におおわれた墨色は、観山の卓抜した筆技と画品の高さを示している。観山の秀抜な技術力は、古典的な東洋諸画法を現代に復活させ、長く後進の師として仰がれた。
所蔵 / 秋田県立近代美術館
-
日本画三保松原図
明治期の日本画家、橋本雅邦の描いた三保松原。遠方に見える富士山が霞と共に淡く描き出されている。手前には白砂青松の名の通り、透き通るような砂浜と、風を受けながらもしっかりと根付いている松が描かれている。
所蔵 / 東京富士美術館
-
日本画富士三保松原図屏風
右隻に駿河湾越しの大きな富士山を望み、左隻には清見関や清見寺、江尻宿などが描かれる。左右隻をつなぐように三保松原が描かれ、先端にひときわ大きく表されるのが羽衣の松であろう。丸みをおびた富士山頂や金雲のわき立つようなリズムが、のびやかな印象を与える。山あいでは桜が満開。春らしいおおらかな画趣が魅力である。
所蔵 / 静岡県立美術館
-
日本画富士山図
富士山を日本平方面から海越しに望み、左に清見寺、右に三保松原を配した富士三保松原図。柔らかな筆墨で表された富士の裾野や、湧き上がる雲など、詩的情趣あふれる清新な表現を見せ、飛翔する鶴、製塩する人など、細部描写にも余念がない。富士山図の名手・狩野探幽(1602~74)の魅力が遺憾なく発揮された、晩年の代表作。
所蔵 / 静岡県立美術館
-
演能の様子を伝える絵画資料は、桃山・江戸初期までは名所図屏風のような風景の一部として描かれたり、能舞台や観衆とともに描かれることが多かった。「能楽図帖」は、演能の部分だけを描くようになる「能絵」の最初期の資料と考えられている。松の作リ物を挟み、羽衣を手にする漁夫白龍と天女が描かれる。シテの天女は、鬘帯を付けず、天冠も瓔珞がなく簡素で、現在とはかなり様子が異なっている。
所蔵 / 国立能楽堂
-
日本画能絵鑑(のうえかがみ)
能好きで知られる6代将軍徳川家宣の周辺で描かれた最上級の能絵手鑑。絹本著色、金泥引きで、元禄以降隆盛していた喜多流による演能場面50図が描かれる。家宣の右筆であった首藤俊章によって「羽衣 天の羽衣とりかくし かのふましとて立のけハ」と、曲名と漁夫白龍の台詞が記される。松の作リ物を挟み、天女と羽衣を手にする漁夫白龍、2人の漁夫が描かれる。台詞のとおり、松に掛かった羽衣を隠そうとする白龍と、返すよう促す天女のやり取りの場面である。
所蔵 / 国立能楽堂
-
日本画三保松原・厳島図屏風
三保松原を含む駿河の東海道沿いの名所を描く。薩埵(ルビさった)峠を回り込み、興津の清見寺や江尻の町並みを抜けた左端には、駿府城と浅間神社が見える。東海道は金色で表され、道行く人や町のにぎわいがこまやかに描かれる一方、第3扇上部の富士山は控えめな表現。三保松原は、画面左側半分にわたってひときわ大きく描かれる。
所蔵 / 静岡県立美術館
-
日本画富嶽列松図
掛軸としては他と異なり横長の画面に富士山と松原だけを水墨と淡彩で仕上げた図である。画面右に薄墨で塗って白く浮き上がらせた富士山を描いている。太い墨線の幹と黒々と短線の松葉を付けた力強い表現であり、蕪村晩年の横長作品の一つである。
所蔵 / 愛知県美術館